2007年9月22日土曜日

崩界者

崩界者(ほうかいしゃ)~ボクと終末くんとアリアさん~

プロローグ

「なぁ、お前はどんな風に世界を終わらせたら、いいと思う?」

 そうボクに話しかけてきたのは、その日、うちの高等学校に転校してきた人だ。

「……………」

 ボクはその声を無視して、狸寝入りを決め込んでいた。それに今日は眠かった。ボクを苛めてくる三人組に通学鞄や教科書を学校中に隠され、ボクは泣きべそをかきながらそれらを探し回っていたからだ。

「なぁ? お前の意見も聞かせてくれよ」

 うるさいな。そう思いながら、ボクはまた、深いため息をついていた。

(いやだなぁ……)

 また、放課後がやってくる。あいつらは二手にわかれてボクの帰り道に待ち伏せしているのだ。正門と校門。どうして、この学校には二つしか門がないのか。四つあれば、少なくとも四分の一の確率であいつらと会わずに済むのに。

 そんなくだらないことしか考えられない、高校二年生。それが、ボクだ。

「なんだ。お前は終焉を迎えたいとは思わないのか? そんなはずはないよな? わかった。お前、どんな終焉が望みか悩んでるんだろ? いいんだ、いいんだ。実はな、俺もそれを探し回っているんだ。今度、探しに行こう。いや、その前にやることがあったな」

 転校生はそこまで言うと、一人頷きながら教室をあとにした

「…………変な奴」

 ボクはまた深いため息をつき、放課後がこないことを切に祈っていた。

 そして。

「…………あれ?」

 ボクはある違和感を覚えつつ、自分の席に座っていた。呆然としていると、訳もわからないまま、朝のホームルームを告げる予鈴が鳴ったのだ。

(なん、だ……? 今って、五限目のはず、だよな……)

 だが、先ほど感じていた違和感はまるで水泡の如く、ボクのうちから消えていったのだ。

 そう────。

その日、放課後がやってくることはなかったのだ。


第一章へと続く。