崩界者~ボクと終末くんとアリアさん~
プロローグ
「なぁ、お前はどんな風に世界を終わらせたら、いいと思う?」
そうボクに話しかけてきたのは、その日、うちの高等学校に転校してきた人だ。
「……………」
ボクはその声を無視して、狸寝入りを決め込んでいた。それに今日は眠かった。ボクを苛めてくる三人組に通学鞄や教科書を学校中に隠され、ボクは泣きべそをかきながらそれらを探し回っていたからだ。
「なぁ? お前の意見も聞かせてくれよ」
うるさいな。そう思いながら、ボクはまた、深いため息をついていた。
(いやだなぁ……)
また、放課後がやってくる。あいつらは二手にわかれてボクの帰り道に待ち伏せしているのだ。正門と校門。どうして、この学校には二つしか門がないのか。四つあれば、少なくとも四分の一の確率であいつらと会わずに済むのに。
そんなくだらないことしか考えられない、高校二年生。それが、ボクだ。
「なんだ。お前は終焉を迎えたいとは思わないのか? そんなはずはないよな? わかった。お前、どんな終焉が望みか悩んでるんだろ? いいんだ、いいんだ。実はな、俺もそれを探し回っているんだ。今度、探しに行こう。いや、その前にやることがあったな」
転校生はそこまで言うと、一人頷きながら教室をあとにした。
「…………変な奴」
ボクはまた深いため息をつき、放課後がこないことを切に祈っていた。
そして。
「…………あれ?」
ボクはある違和感を覚えつつ、自分の席に座っていた。呆然としていると、訳もわからないまま、朝のホームルームを告げる予鈴が鳴ったのだ。
(なん、だ……? 今って、五限目のはず、だよな……)
だが、先ほど感じていた違和感はまるで水泡の如く、ボクのうちから消えていったのだ。
そう────。
その日、放課後がやってくることはなかったのだ。
第一章へと続く。